2013年11月29日金曜日

31. 南寧へ

31. ハノイ、南寧

何事にも、川上と川下というのはある。遡るには、無駄なエネルギーを消費しなくてはならない。大損こいた。

朝になる。まだ眠いのに。
駅についた。プラットフォームにまでタクシーがいる。
こんなちんけな駅で体制を立て直すのは、なんとも心もとない。
駅の人に香港と言っても、通じない。地図を見せると、8時まで待てという。
係の女が、拡声器でなにやらアナウンスする。厳しい声。鬼教官のようだ。
ベトナム語が分からない。誰かにすがりたい。ストールを電車に忘れた。ああ、買い足さなくては。。

急いでいても、何も見つからんのかもしれぬ。のんびり行けば、友達も出来るだろうに。

思い通りにならないことに対する苛立ち。

当初、電車で行こうとした。電車だと、800,000ドン。寝台列車で夜の9時発、翌日、昼の9時着だ。

結局、バスのチケットを買った。あさの9:30発。南寧行き、Nanningというらしい。450,000ドン。駅近くの代理店で500,000と言われたが、直接バスステーションまで行けば値切り交渉が出来るだろうと考え、「ATMに行ってくる」と薄情にも嘘を付いた。色々調べてくれたネーチャンには悪いと思うが、仕方が無い。半額になるかもしれんのだ。バイタクをつかまえ、バスステーションへ。バイタクのおっちゃんは、陽気で、憎めない感じだ。
バスステーションへではなく、代理店へ連れてかれた。コミッション欲しさに騙された!と思った。
代理店のババは、物腰柔らかだが高圧的な雰囲気があり、値切りは一切受け付けないという感じだった。
大きなお札しか持ってないために、「金が無い、空席があるんだから乗せろ」という言い訳は通用しそうになかった。

約束なので、バイタクのおっちゃんには、30しか渡さなかった。くしゃくしゃの微笑みで情に訴え、身振り手振りで「そのポケットの10をくれよ」と地団駄を踏んだ。40.40と散々言われたが、断った。何分間も粘る中年男の交渉は、哀愁漂っていた。


勝手にホテルのトイレを使うなと、「エーニースワリー、エーニスワラー」と入口のボーイに言われた。客以外は何人もホテルへの立ち入りを禁ず。という意味だろうか。笑ってごまかした。


やれやれ、色々あったけれど、これで東南アジアはおしまいだ。

何故香港へ行くのだろう。正直、気が進まない。
今、一番行きたいところは、どこだと思う?

東京だ。

旅行代理店の地図に、Tokyoと見えた時、安ければ本気で一時帰国しようかと考えた。そうだな、3万円ならもしかしたら。

だが、私はもうバスに乗った。California Dreamingを聴きながら、気分を香港へ向ける。少なくとも、機嫌切れのパイン缶を食べ過ぎて金髪のヒットマンの赤い靴をきちんと揃えるまでは、何処にも行けない気がした。

冗談だ。

親切にも、このバスには一席に必ず一つはエチケット袋が備え付けられている。そういう道を行くのだろうか。
あまりバスの中で携帯を眺めていると、また親切に甘える羽目に陥るかもしれない。大人しく景色を眺めるとしよう。


途中休憩のレストランで気付く。バスの乗客は全て中国人だ。
痰を吐くのは文化なのだろうか、汚い。なかでも、太ったおっさんのそれは非常に気分を害する。
国境、大丈夫だろうか。


自分が小さいのか、山が大きいのか分からないくらい圧倒的な森とか。

南寧に着く。大きなバスターミナルのようだ。電車のチケットを取ろうとするも、言葉が通じない。トレインも通じない。

絵に描いて説明する。しかし、埒が空かない。英語の喋れるおばさんを連れて来てもらい、中国語の筆談も交え、ようやく理解。

全て中国語で来られるものの、私がおうむ返しするものだから、理解したと思って早口で話を進めてくる。外人だろうと母国語で貫くなんて、日本人のようである。欧米人は1人も見ない。日本みたいだ。

さて、どうやらここには電車はないらしい。バスか飛行機だそうだ。
寝台バスらしい。チケットを450元で買う。東南アジアに比べると高い。19時発、11時着。

南寧は、ネオンが煌めく大きな都市だ。池袋の様だ。だが、デカい。全てがでかい。

19時というから、あと1時間近くあるなぁ、と思っていたら、間違えに気付く。時差だ。
バスはあと10分で発車という。危ないところだ。

売店で、旨くもないパンを買い、頬張る。物価は日本とあまり変わらない。寝台バスは、そこそこ、快適だ。

明日は着くなりゲストハウスを見つけようか。いらない荷物が山ほどある。日本に送りたい。

バスはしばし揺れ、脳がシェイクされる。これで寝れる人間は、余程睡眠に飢えているか、ズボラかのどちらかであろう。


折角なので、東南アジアのおさらいをしよう。

チェンマイ、堪能した。

ルアンプラバン、ツキに見放された。色々歯車の食い違いを感じた。救いは、アレックスとの出会い。

バンビエン、思い立たなかったら、泥のように1週間は過ごしていたに違いない。悪魔の毒牙にかかる前に抜け出して、正解だったのだろう。

ビエンチャン、なんだかんだ2日居てしまった。大きな街で、バックパッカーが多かった。良いカフェはなさそうだった。あの胡散臭い日本人三人組は、元気だろうか。メコンの幸も堪能せずに終わった。

バンコク、クリスが居なければ詰まらない街だ。いや、東京の様に金で潤うやかましい街なので、貧乏な借りぐらしには向かない。欲望の街だ。焼き鳥のクオリティは、高い。

シュリムアップ
バンビエンと似た空気感。結婚落ち着く。日本人だらけだった。

ホーチミン
暗く陰鬱だが、人々の懸命な営みが感じられる。歴史の悲しい足枷が外れたとはいえ、裸足に重みを覚えているかのようだった。
観光地に、暗い歴史遺跡しかないのは、見ていて切ない。

サイゴン
陽気な街。もっと永く居たかった。人々は優しく、女はスリムだった。コーヒーも、探せばもっとあったのだろう。一週間は過ごせる。飯も、大して堪能していない。とても美味しいというネズミの肉、食べたかったなぁ。

ハノイ
5日ぐらいな過ごせるかもしれない。バンコクのように、死ぬほど暑いというわけでもない。人々は、他の街と同様、卑しい。ギターを買えば良かったかな。

途中、パーキングエリアに停まった。15分のトイレ休憩だ。すかさず食堂へ。ブッフェのように、オカズが並ぶ。肉の煮込みのようなものをチョイス。ごはんも。14元。豚の角煮に、キャベツ炒め、魚醤油くずしと言ったところか。美味い。ごはんも山盛りだ。急いでかき込み、トイレへ。トイレには、
上前一小歩
文明一大歩
とあった。男性便所特有の、一歩前で用をたして下さい。という意味の張り紙。
意味がわかるだけで、こうも嬉しいのか。勝手に分かり合えた気分になった。満足だ。

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