2015年6月24日水曜日

婚約者と影

土曜日の渋谷は少し肌寒かった。
道玄坂にはあぶれた半ズボンの男たちが騒がしく、部屋はどこも満室だった。無愛想なネオンは道行く人に赤いfullの文字を忠告した。

何組ものカップルが服を脱ぐためにうろうろと歩き回っていた。そして、我々もそうだった。

横浜から新橋へ五反田を通過して渋谷へ来たものの、目的には辿り着けそうになかった。

城の門をくぐるとき、女は一瞬覚悟を見せた。
いける。そう思った。
だが満室の看板を見て我に返ったらしい。
はや歩きになって、駅に向かい始めた。
結局無駄なあがきは止めて朝まで散歩した。


恵比寿方面の歩道橋で、時間をつぶした。

彼女には婚約者がいた。
東京へ転勤した際に別れた。
28にもなると本気で結婚を意識し始めるらしい。
私には結婚の気など1%もない。

期限付きの恋ということで話はまとまった。
一夏の恋という日本酒を飲んだ後では、それが妥当な気がした。


たくさん写真を撮った。
決して優れた写真ではないが、
好きな女を撮るのはそれだけで楽しかった。

ダーツをして、別々の家に帰った。









2015年6月20日土曜日

小さなパンドラ

朝起きると、女が泣いていた。
寝ている間に携帯を勝手に見たらしい。

ばかだねまったく。

へらへら笑ってごまかそうとしたが、
幸か不幸か、彼女は決定的な一文を読んだらしかった。
言い訳は無用だった。


さえない一日だった。



浅ましいことに、
共犯者を悪者にする事で応急処置を施した。


「なにかが壊れてしまった。」
寝る前に彼女はそう言った。

箱のなかの希望を信じて、ひとまず眠りについた。
だが、彼女はまた開けるだろう。


それにしても、女の泣き顔は美しい。







2015年6月17日水曜日

キスもさせない

昼まで寝ていた。
二度寝を繰り返して、結局3時過ぎまで寝ていた。
リビングは暗く、犬もいなかった。
冷蔵庫のカレーを温め、チーズをのせて3分もかからずたいらげた。


呼ばれたので、18:30に日比谷線の終点へ。家具屋をいくつかまわった。

やきとりを食べ、ダーツをした。ダーツをおごってくれた。

駅のホームでキスを求める。
失敗。ガキに見られているようだ。



何をしているんだろう、虚しい。
映画を見たい。
いつもの女の家へ。





2015年6月15日月曜日

液体をぶちまける

12時から17時まで珈琲屋でバイト、21時近くまでいた。場所は古本屋街から少し離れたオフィス街。

夜、新宿で飲む。ビール180円24時間営業の店。
アーティストになりたい?
店舗のデザインでもしてみれば?
モッドバーもってくる?
ミルクタップもってくる?
コーヒータップ?

上司に何かしら言われ、それなりに響いたのだろうか?

大衆居酒屋でたくさん飲み、たくさん食べた。3人で3時間くらい居たが、1万円を超えることはなかった。


オーストラリアの旅行から帰ってきた先輩は、私が来たことを快く思っていたのだろうか。



いずれにせよ、
改めて自分は何をしたいのだろう?
アーティストになる?
感性は磨いているのか?

特に何もせず、惰性で働き、適当に女を抱いて、それで満足なのだろうか?


Curtis fullerのタフな低音が、ヤワな精神に何となく響く。


とはいえ、何もやる気がしないのは確かだ。
流れに身を置き、巻き込まれるぐらいが関の山だろう。

言い訳はたくさんある。





女と女と男と男

昨日から仮病を使っていた。
女の家で寝ていた。

仕事に行くと嘘ついて、今度は別の女にあいにいく。雨は降りそうで降らなかった。

城みたいな建物で女と会う。
ろくに会話も交わさず、鍵をしめて、ベッドに寝かせる。3時間余り横になって、部屋を後にする。

一緒に食事でもと思ったが、腹は減っていない。
どこか遊びに行こうかとも思ったが、趣味が違いすぎる。
キンタマは空っぽで生産中止、歩くのもうんざり。
写真を撮るも、恥ずかしいと嫌がる。そしてこれがどうにも絵にならない。

どうしようもない。
次にあう約束もせずに、駅で別れた。


この女は20代後半で、都内で事務仕事をしている。旦那は休日も出勤で、スポーツの観戦を除いて特に何んにも無い。この関係が数年続いているという。

いつも眠そうな口をして、ふわふわと歩く。パッとしない細身の、そんな人間だ。

もう3回くらい会っている。

そもそも、出逢いすら褒められた出逢いではない。結構控えめに言っても。

・・・・

中野の中古カメラ屋に行く。
国分寺までコーヒーを飲みに行く。

国分寺の店でマスターは、
「コーヒーや飯、酒がうまいわけじゃないんだけど行くと落ち着いてつい深呼吸してしまう店。別に誰とも話すわけではないのに、長居してしまう店。俗に言うサードプレイス。
それはどういうお店なんだろう?
最近、東京行って店をまわっても高が知れている。
うまいはうまいけどそれだけで詰まらない。
満たしてくれる店が欲しいし、そうありたい。
そもそも何を満たしているんだろう?」
と語りを始めた。

「驚きが無ければ感動がない」
「スターバックスに見える公共性」
とか、こんなことが思い付いたが、やめた。

いま思えば、
本当の答えは「心とか魂とか、霊感とかそんなもの」なのかもしれない。

瞑想的な雰囲気を、忘れているのかもしれない。

・・・

新宿で、卓球をする。
役者志望の友。卓球は強かった。
黒い長袖のTシャツが汗で白くなった。

何枚か彼を撮ったが、絵になった。



家に帰る。