2013年11月29日金曜日

10. メコン川、パクベン

10日目 メコン川、パクベン
私は今、メコン川を下る長いボートに乗っている。98人乗せたボートは、なかなか快適だ。田舎の各駅列車の様な硬い椅子だが、座れるだけましというものだ。

隣の男はニューヨークからきた、ローリー。150人乗せようとするボートの係に、ノーを連発してネゴシエートしていた。ほうほう。素晴らしい。普通の人は、ま、経験でしょうと、甘んじるだろうが、危険は避けるべきだ。と。


1時間ほど遅れてボートが出発した。苛立っていた客たちも、今は静かだ。風がさむい。乗客は、ほとんど全て観光客だ。日本人も何人かいて、少し話した。

しばらくすると、急に大雨が降ってきたが、しばらくすると止んだ。

土は粘土質、小学生の靴下のように川は淀んだ色をしている。水は重たそうで、水面を蛇のようにくねらせながら音も立てずに流れ続ける。不気味だ。
ときたまマフィンのようなかたまりの泡沫が浮いていて、これ見よがしに渦の真ん中で回っている。

波もなく流れる茶色い水面が、対岸に生い茂る緑を反射するのが妙に不気味だ。
Being John Malcovich

パクベンに着いた。ルアンプラバンまであと半分。今日は初めてニューヨークの友達と相部屋。

町は砂だらけ。あんまり面白くない。部屋に着くなり売人が葉っぱを売りにきた。おっと、これがラオスか。ローリーが軽くあしらった。少し興味があったが、なにやら頭痛がするし、今日はやめておく。バッドになったらコトだ。

レストランでめしをくった。バッファローの肉だ。なんてことない。

ローリーは面白い男だ。どことなく漂う自信の無さと悲壮感は、十代から髪が薄くなり始めたことに起因しているらしい。
髪を触りながら本を読んでいる。いつもは帽子を被っている。潔癖性の気があり、頻繁にスボンを手で払っている。

思春期の彼にとって、若ハゲは自信を喪失させるのにぴったりだったのだろう。女関係は地味である。


0 件のコメント:

コメントを投稿