2013年12月31日火曜日

75. トルコへ

75. トルコへ
朝起きて、コーヒーを飲んだ。
9時ころに宿を出た。飛行機は12時発だ。
道中、リキシャが話しかけてきた。ハローハロー。
ハローを重ねる度に変わるイントネーションが面白い。この馬鹿なインドともこれでおさらばか。ふふ。感傷的だ。ポイ捨てしても、唾を吐いても怒られないインド。ばーか!
そんなことを考えている間も、リキシャは話しかけてくる。
ハロー、ジャパニ、コンニチハ、ウェーァユゴーィン。
ルピーが余ってるし、10ルピーくらいで駅まで行こうかなと、
メトゥロ、メトゥロ。と言ったが、聞き取れない顔をしていたので、メトゥルルォと、巻き舌大きな声で言う。
すると、あっちへ行け、の意味と勘違いしたのか、リキシャは逃げて行った。
メトロと言ったら逃げて行ったリキシャ
キットカットが65ルピーもした。高い。
列車のチケットも150ルピー。
高い。
またしても、進行方向に背を向けて座ってしまった。真横の景色は早すぎて見えない。少し遠くの景色がさらに遠くへ飛んでゆく。
綺麗なイスラム様式、めちゃくちゃなヒンドゥー寺院、目の据わったキリスト教会、肩身の狭い仏教哲学、うるさいクラクション。ゼロから始まる階。
火と刃物を正しく扱えないようじゃ、まだまだ子供ね。
飛行機
なんて美しい美しい美しい岩山、雪、雲
凹凸のはっきりした雲、綿のようにぼやけた雲、雲が宙に浮いているということが、今さらながら、不思議に感じられる。
ときどき、あらわれる盆地。
川があって、山に囲まれた盆地。人が住んでいる。街だ。
そして、ひたすら続いてそうな雪山。赤茶色の岩山を容赦なく覆う白く分厚い雪のテーブルクロス。
風の通り道だろうか、水の通り道だろうか、とげとげ。
太陽があっちから陽射しを投げているから、こっち側にくっきりした影が連なる。
脆い煉瓦で出来た年寄りの手の甲のようにひび割れた山肌。大きな岩だ。
今度は、粉を散らしたような雪。吸い込んだら、激しくむせてしまいそうな、細い細い粒の粉。0.6ミクロンの滑らかな天使の頬っぺたのように滑らかだ。
太陽に飼われながら、茶色い岩と雪の一進一退が日々続く。
あとはもう地平線の奥まで雪だ。
山を幾つも超えた。
機内ではビデオが流れてた。
街が見えてきた。雪がたくさん積もっている。
山も、青い。黒々した青だ。
太陽を背にして飛行機は走る。身体を震わせながら、ざくざく風を切る。カザフスタン。山に囲まれた広い盆地。雪にカビのように浮かぶ木々。枯れているのか、冬眠中なのか。
煙突が、三本、四、五本、煙をつくって雲にしている。ブロック状の建物。曲がりくねる小川。おもちゃみたいな家。
着陸。
滑走路に雪が!スリップしないのだろうか。
少しひやひやしたが、難なく着陸。
乗客たちは思わずささやかな拍手をした。
夜を追いかける。
キャンドルのような橙色の光が暖かそうに、切り取り線の穴みたいに点々、街に線を敷く。
光の数ほど、幸せも不幸も多くはないだろう。しかし、どことなく優しい光だ。
寒い空気。排気ガスが交じった冷たい空気。
星をみたり、恋人とじゃれ合ったり、ご飯をつくったり、布団でぬくんでみたり、音楽を聴いたり、犬や鳥に食べ物をあげたり。
ああ、ああ、なんて美味しいウイスキー!!!
飯が!旨すぎる!
これは、チーズ?あ、オリーブ?たっぷりハーフサイズのキッシュにデザートはラズベリーのムースだと!?もちろんコーヒーは美味しくないが、これぞ機内のコーヒーだ、風情あふれるぞ!
カルチャーショックだ。オレガノ、トマト、スライスポテト。温かい。エキストラヴァージョンオイルだと!?バルサミコビネガー!チーズもプロセスチーズじゃなくて、クリームチーズ!…ああ、文化の上流に登っている気がする。ああ。
クリームの甘いワインが実に心地よい。
トルコ、さっきまでの夜。

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