2013年12月31日火曜日

72. リシュケシュ

72. リシュケシュ
スティーブンの部屋。
4時に目が覚めるが、6時まで再び寝る。ヨガへ。
これが二回目のヨガ。ヨガの先生は、小太り白髪の欧米系のおばさん。60くらいいってるのだろうか。彼女が美しい声でマントラを唱えるので、思わずうっとり聴き入ってしまう。
ポーズとしては、コブラ、マウンテン、サンウォリアー、そんなところだ。シヴァッサナという死体のポーズをして終了。
部屋で、コーヒーを淹れて音楽を聴く。今やハシシがなくても、音楽は素晴らしい。瞑想の効果だろうか。音楽に取り憑かれる。気持ち良くて、涙が出そうになる。
その後は、インターネットカフェで二時間ほどぐうたらし、ジェフと川をぶらつき、川べりのガートでくつろいだ。彼等はチルアウトという言葉をよく使う。その言葉が今ではすっかり気に入ってしまった。
川の音が気持ち良い。川は澄んだ緑色をしている。ひんやり冷たい風のなか、ジェフの巻いてくれたたばこを吸ってぼんやり過ごす。
リシュケシュは、何もない。しかし、全てが揃っている。何となく、完璧なのだ。
4時に、ハルドワールに向かう。
皆、今日ここを発つのだ。リキシャに便乗する。
リキシャスタンドは、対岸にある。
合計五人でリキシャを割り勘しようということになった。ホテルの人がいうには、高くても一人40ルピー。
公共バスが20分に一本出ているらしく、それが30ルピーなので、40が妥当だという。
実際に、40ルピーで話がついた。
リキシャにはすでに二人のインド人が乗っていた。我々5人が乗り込むも、リキシャは出発しない。ジェフは怒った。早く出発しようと。すると、リキシャのドライバーは、10人揃ったら出発するんだという。
しかし、後部座席は6人で満席状態だった。我々は大きなバックパックを持っていたので、なおさらだった。
結局ジェフが50ルピー払うから今すぐ出発しろと言って、リキシャは出発した。
それを私は黙って見ていた。ジェフに任せておけばいいやと思っていた。実際、いくら文句を言ったところで彼らはドライバー通し予め値段を決めているので、こういうスタンドでは文句を言うだけ無駄だというものだ。
しかし、それを見ていたデンマーク人の太っちょな女の子は、「ジェフはイケメンだし、タフだし素敵ね」と惚れ惚れ言った。ああ、なるほどと私は少し恥ずかしく思った。
ジェフはチェコ人の彼女と旅をしている。
私一人でも大変なのに、彼女が旅にいたらどれだけ大変なんだろう。考えるとぞっとする。第一、自分一人の時間はあるのだろうか。寒い夜に抱き合って寝るのは素敵だろうが、少し瞑想してから自分のタイミングで寝ようなどという機転は効かないに違いない。道に唾を吐いたり、ポイ捨てをしたり、鼻くそをほじくるたびに、彼女の中の私のイメージを壊すことになるのだ。コルカタやバラナシなど、空気の汚いところでは、鼻くそが黒くなるという。それを見た彼女の顔を想像すると笑えてくる。
今回のリキシャ騒動も、彼が一人だったら、10人相乗りでも耐えただろう。面白がって窮屈を楽しんだに違いない。しかし、彼女が泣きそうな顔でドライバーに窮屈さを訴えたがために、ジェフはタフにならざるを得なかったのだ。
本来、この旅には、男友達が一人ついてくるはずだった。だが、出発の3日前に彼が急遽ドタキャンを決め込んだがために、一人旅になってしまった。今となっては、彼のドタキャンに感謝している。ドタキャンの理由はいくつかあるだろう。両親の反対、彼女の反対、日本での怠惰気ままな生活、私との長期間の生活の億劫さ。
やれやれ、やめよう。
彼を馬鹿にしたところで、自我に間抜けな快感が走るだけである。
一時間ほどリキシャは走り、ハルドワールの駅前へ。
Wi-Fiつきの宿を見つけ、300ルピで泊まった。夕飯は食べず、瞑想をしたが、30分経たぬうちに眠気がやって来たので、そのまま寝た。
何をしていてもお腹が空いている。再び私はエンプティーになった。中国人に笑われるぜ。

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